…どれくらい時間がたったろう。
漸く拓は顔をあげた。
まだしゃくりあげてはいるが。
緋咲は右手で頬に残る拓の涙をそっと拭き、唇を右の目尻に寄せる。
そして、左の目尻に唇を這わせ、今度は鼻の頭に。
『…もう泣くな』
緋咲は拓の頬を両の掌で優しく包み込み、そっと唇を重ねる。
何度も（緋咲にしては）優しい接吻を繰り返す。
『…くぅ〜ン』
拓が（激しい接吻の）おねだりをはじめたので（爆）、漸く緋咲は安心した。
『…で、何があったんだ？』
心配そうに見つめる緋咲に、拓は、
『チョコ…』
『？』
『今日バレンタインでしょ？…昨日から緋咲クンの為にチョコ作って…だけどみんなに食べられちゃって…』
拓がまた泣き始めた。 
『…緋咲クンへのチョコ、少しだけになっちゃったの…』
緋咲は拓の机を見る。
ラッピングが解かれたチョコがあった。
あと残り２個。
『…緋咲クン甘いの苦手だから、出来るだけ甘いの控えて作ったのに…』
…緋咲は思った。
折角の拓からの手作りチョコを食いやがったのは爆音の面々だと（正解）。
確かに自分は甘いものが苦手だ。
だが、拓が作ったモノは別格である（断言）！
緋咲は残っていたチョコを一粒頬張る。
良質なブラックチョコの苦みとオレンジピールの香りと爽やかな酸味。
『美味い』
もうひとつ、頬張る。
炒った胡桃がまた違った味を口中に広げた。
『美味い』
緋咲はまさしく満面の笑みを浮かべた。
『拓…サンキュ。美味かったよ』
『本当？』
『甘いの苦手な俺が言うんだから間違いねぇよ』
そう言うと、緋咲は拓に濃厚な接吻を贈る。
『…さてと、今度は暖めてもらおうかな』
『？』
『…寒かったんだゾ』
『あ…（汗）』
チョコを食べられたショックで緋咲との約束をぶっちぎってしまった拓。
緋咲はチョコも美味しかったが、もっと美味しいものを食べられる嬉しさで（爆）。
『ちょ、ちょっと待って緋咲クン、下には親が…』
『んぁ？拓が声出さなきゃいいだろ？』
『…そんなん絶対無理っ』
『遠慮するなよ』
『いやぁ〜っ』
…そんなこんなで痴話喧嘩（まだ脱いでない・爆）している時に、家の外で声が聞こえた。
『あれ？あの声』
拓が窓の外を見る。
『拓の奴、まだ拗ねてるかなぁ』
『第一リョー、お前チョコ食べ過ぎ！』
『うるせぇカズ！お前だって胡桃食べ過ぎだろっ！』
『おい、近所迷惑だから静かにしろ！』
『…拓ちゃん、許してくれるかなぁ』
マー坊は何やら可愛い箱を大事に抱えている。
『とにかく、俺達で出来ることしたんだから、な？』
秋生はマー坊の肩をそっと抱き締めた。
そう、爆音メンバーが拓の自宅にやってきたのだ。
『どうしたんだろ、みんな』
『拓、会ってやれよ』
『緋咲くん？』
『俺とすればチョコ食われたのは許せねぇけど、んでもあいつらはオマエの大事なダチだろ？』
『…』
『何にせよ、わざわざ来たんだから会えよ。但し、オマエに危害を与えるようであれば話は別だが』
拓は緋咲に促されて、爆音の面々に会う為に下へ降りた。
丁度マー坊が呼び鈴を押すところで、拓がドアを開けたため、心の準備が出来てなかったマー坊達は思わずうろたえた。
『たっ、たっ、拓ちゃんっ！？』
『どうしたのみんな？』
拓は不思議そうに面々を見た。
『拓ちゃん、さっきはゴメン。チョコ食べちゃって』
マー坊が半ベソで拓に謝った。
『…ううん、もういいんだ。ボクがみんなにはっきり言わなかったから』
『でも緋咲には？』
マー坊から緋咲の名前を呼ばれて、一瞬言葉に詰まった拓。
『…緋咲クンなら』
『ここにいる』
拓の背後に緋咲がいた。
心配で部屋から出てきたのだ。
一瞬緊迫した空気が周囲に広がるが、秋生がそれを破った。
『緋咲、今回の件に関しては全面的に俺達が悪かった…申し訳ない』
秋生が真っ先に頭を下げた。
秋生が頭を下げたのに驚いた爆音メンバーは、自分達も頭を下げはじめた。
『拓、すまんっ（リョー）』
『拓ちゃんゴメンな（カズ）』
『拓、申し訳ない（ミツオ）』
『拓、ホントごめん（ジュンジ）』
そして最後にマー坊が拓に小箱を渡した。
『…みんなでケーキ作ったんだ。夏生さんに作り方教えてもらいながら…』
よくよく見るとメンバーの制服が粉だらけである。
マー坊の口元に生クリームの残骸があるのはご愛敬。
『あけてみて』
拓が箱をあけてみると、中には可愛いショコラケーキが入っていた。
甘いもの好きな拓は素直に感嘆した。
『うわ、美味しそう！』
『見た目も味も夏生が確認してくれたから、それは保証する（秋生）』
『あんまり甘くはねぇけど、美味いゾ（ジュンジ）』
『この俺達が初めて作ったんだからしっかり味わえよ（リョー）』
『んでも、お菓子作りも結構おもしろいよな（ミツオ）』
『確かに。飾りの生クリーム少ないのはマー坊クンが食べたから勘弁（カズ）』
マー坊はバツが悪いのか、カズをこづく。
『…んで、緋咲』
マー坊が緋咲に向かって言う。
『今回は俺が悪かったけど、この次は絶対負けないからなっ！』
緋咲は拓を背後から抱き締めながら、
『ああ。今回の件は水に流すが、今度拓を泣かしたら…幾らてめー達が拓のダチでも俺は容赦しねぇゾ』
拓を抱き締める腕に力が入った緋咲。
拓にべたべたへばりつく緋咲のその姿に、思い切り虫酸が走ったマー坊だが、今日だけは分が悪いので、
『じゃ、そろそろ行こ。夏生さんの〔爆音〕莓スペシャル食べなきゃ！』
『そうだ、拓のケーキ作ってたせいでお預けだったし！（リョー）』
『それじゃ拓ちゃん、また明日、学校でな（カズ）』
『食べ過ぎて腹壊すなよ、拓（ミツオ）』
『明日味の報告しろよ、拓（ジュンジ）』
『夜分遅くすまなかったな、拓。また明日…で、緋咲』
秋生は緋咲に何やら耳打ちをする。
緋咲は思わず苦笑いしながら、秋生の肩を軽く叩き、手を振った。
『じゃ、拓ちゃん！明日学校ね〜緋咲っ、拓ちゃんをちゃんと寝かせろよ！』
メンバーは拓に手を振って自宅を後にした。
マー坊の最後の一言に、拓は真っ赤になってしまったが（笑）。
　
　
…結局緋咲はお泊り（爆）。
拓の両親が、〔もう遅いから泊まっていきなさい〕と引き留めた為である（うおー）。
父の幸弘は緋咲と酒が呑めるのを楽しみにしていたが、圭子にたしなめられ（爆）、明日秘蔵の一品を是非！と緋咲に言って、圭子と寝室へ。
拓は、〔未成年者の飲酒は法律で禁止されてるンだけどな…ボクが呑めないから緋咲クンと呑むの楽しみなのかな？〕とかなり複雑な心境。
風呂に（別々に・爆）入ったふたりは、部屋に戻って、爆音メンバーが作ったケーキを試食してみた。
『美味しい！』
拓はニコニコしながらケーキを食べる。
だが、緋咲は食べるのを躊躇していた。
当然である。
なんせケーキは苦手な部類だから（汗）。
『緋咲クン？』
『…砂糖の固まりはちっと…』
拓は自分のスプーンで一口分ケーキを取ると、
『はい、あーんして』
情景反射的に緋咲はケーキを食べた（爆）。
『…美味い。だけど拓のチョコほどじゃねぇな』
『…』
嬉しいけど、ちょっと言葉に困る拓。
『拓。はい、あーん』
今度は緋咲から（爆）。
あーんしたとき、緋咲の舌がぬめり込んできた。
『！』
チョコの味がする緋咲の舌が拓の口中をまさぐる。
『…もう、我慢できねぇ』
緋咲は拓をお姫様だっこして、ベッドに降ろす。
『うん…ボクも』
拓が緋咲にしがみついた。
『拓…』
緋咲は拓の服を脱がしながら、自分も服を脱ぐ。
互いを遮るものを全て取り払ったふたりは、きつく抱き締めあう。
そして、もう一度、拓に濃厚な接吻を贈った。
『オマエは誰にも渡さない…拓…愛してる…』
『…薫…』
拓の頬に涙が零れる。
　
拓は想う。
今日のバレンタイン、ボクは何度泣いたろう。
でも、この涙は忘れない。
だって薫が傍にいるから…。
ボクは薫を愛してる。
愛のカタチは違うけど、互いを求める気持ちはきっと一緒だから。
ずっと、薫のそばにいる…どんなに心傷ついても、ボクは薫を愛してるから…。
　
緋咲は想う。
どれ程俺はこのぬくもりに餓えていたのか。
拓がいない世界なんてもう、考えられない。
お互いに求める愛のカタチは違うだろう。
俺はそれでも拓が好きだ。
喩え、世界中を敵に回しても、拓だけは護りぬく。
ずっと、拓のそばにいる…オマエだけを愛していたいから…。
　
　
　〔ＥＮＤ〕　　　／　オマケ　　／　　　戻る

（清琉コメント：文字通りいきあたりばったりです。
パソではなく携帯でカキコなんで、見にくい点もあるかもしれませんが、それは勘弁してください。
なお、えろネタはパソで作成中です。待ってて下さい。
え？いらない？
くすん（泣）。）

（ドリーマーのコメント：甘々なＳＳをありがとうございましたｖｖｖすっかり家族公認の中になってて―――しかも爆音メンバーも公認っすか？！・・・良いなぁ・・・ザキ（笑）それ以上に、二人ともラブラブ過ぎ！？（*＾＾*）ザキがどんな顔して�чzしに「おやすみのちゅうｖ」をしたのか想像付かなかったんですが・・・（爆）更に、「あーんｖ」とは？！（愕）うぅぅ・・・こっぱずかしいです（*Ｔ◇Ｔ*）いやーん、もう、ばかーーーんっっ♪♪―――てへｖｖｖ（←嬉し過ぎて壊れてますｖ）新婚以上に＜いちゃいちゃパラダイス＞の二人をこれからも応援しますので、今後もこのシリーズ頑張って書いてください☆あ、エロネタも楽しみにしてまーーーす！！）