ぽっかりと浮かんだ意識のままに目を開けたら、そこは見慣れない場所だった。

でも、その感覚は一瞬だけで・・・視線を流した先の壁に貼られたポスターが目に焼きつく。

心を揺さぶるそこが何処なのかを、僕は良く知っていた。

慌てて、起き上がって辺りを見回す。

セミダブルのベッドに、壁際に置かれた機材。

胸を締め付ける懐かしさのままに、ただ視線だけを巡らす。

壁の汚れは、癇癪を起こした時に、投げつけた瓶が打つかってできたものだと聞いたし・・・散らばった雑誌やゴミは、今は綺麗に片付けられていたけれど・・・。

手を付いたら、ギシッとベッドのスプリングが鳴った。

ここで――――。

何度も身体を重ねた、君と。

蘇る甘い時間と、幸せな記憶。

綺麗な布団に、残っている筈がないのに、追い求めるように残り香を探してる。

抱き合った事・・・触れ合った事・・・。

まだ、こんなにも身体が覚えている・・・君の事。

「・・・ふっ・・・」

抑え切れなかった嗚咽が漏れる。

もう、二度とこないだろうと思っていた場所。

君が居た場所。

―――君の、部屋。

まだ、半年しか経っていない。

もう、半年も経ってしまった。

相反する二つの“想い”。

君を失って、もう半年も経ってしまった。

君が居なくなって、まだ半年しか経っていない。

―――あと、どれだけ経てば、この想いから逃れるのだろう。

忘れたい。

忘れたくない。

君は、忘れても良い・・・と言ったけれど。

僕は、忘れたく―――無い。

君は、ただ温もりを求めただけ。

本当は、僕じゃなくても良かったのかも知れない。

そんな風に思いたくはないけれど・・・。

それでも、叶えられなかった願いが、ずっと僕を苦しめる。

『ずっと、一緒にいようね・・・』

叶えられなかった、【約束（ねがい）】。

約束の指切りは―――君が居なくなってしまったから・・・もう、果たせない。