風に揺れる多くの白い花。

ベイブリッジの上・・・君の魂が逝ってしまった場所。

もう半年も経つのに、君に惹かれた者達の捧げる想いは変わらない。

僕も、気付くとここに来て、君と話をしている一人。

君に魅せられた内の・・・。

「・・・今日は、暑いね。」

口から飛び出すのは、他愛無い台詞。

君が居たら、こんな風に話しただろう事を、一人で呟く。

端からみたら、頭がオカシイんじゃないかと思われても仕方ないかもしれない。

それでも、僕は構わない。

「・・・・また、くるね。」

笑って、そう告げる。

本当は、離れがたいけれど・・・。

クルリと振り返ったら、目線が合った。

何時から、そこに居たのだろう？

照りつける太陽の光りが、欄干に反射して、輝く。

僕の止めたバイクの横に、同じようにバイクを止めて立っていたのは・・・。

「・・・っっ！！」

無言でバイクに乗ろうとしたら、強い力で腕を掴まれた。

「何時まで、自分一人が不幸を背負ってるような顔してやがる・・・」

それは、怒り。

ぶつけられるように言われた言葉が、全身を痛め付ける。

返せる言葉がある筈も無い。

「辛気臭ぇ顔で、アイツを何時までも縛るな・・・もう、解放してやれ・・・。」

続けられた言葉に、胸が抉られる。

解放？

―――解放されたいのは、僕の方だ。

散々、身体や言葉や・・・想いで、僕を雁字搦めにしたのに・・・心を奪っていったのに、返してくれないで逝ってしまったのは・・・。

叫びたいのに、言葉が出ない。

言えない・・・認めたくない・・・。

僕の全ては、君のものだったのに・・・君は決して僕だけのものにはならないのだと言う事を―――。

強い日差しが照りつける。

黒い影が足元の地面に張り付く。

そこから、動けない。

何処にも―――行けない。

全身から力が抜ける。

掴まれた腕の痛みだけが、現実を訴え続けていた。