雨の夜・・・初めて触れ合った君の体温は氷の様に冷たくて。

心まで凍ってしまいそうな君が、救いを求めるように差し出した腕を拒む事は僕には出来なかった。

泣けない君の変わりに、泣く事で君を慰めたかった。

僕ができる事なら、してあげたかった。

僕の熱を吸い取るように、僕の存在を確かめるようにたどたどしく慎重に触れる君の指先が、何度も肌の上を滑って。

怖いのと恥ずかしいのでどうすれば良いのか理解らない僕は、捧げられた贄のようにただ黙って君の行為を受け入れた。

冷たい君の身体を温めて上げられるなら・・・それだけを望んでいた。

どんどん熱くなっていく身体を持て余しながら、冷たい君の身体を抱き締めて・・・そうして、僕たちは熱を分け合った。

氷の様に冷たかった君の身体は、僕の熱を吸収して・・・縋り付くように僕を抱き締めた、君の温かくなった腕の中で・・・泣きながら僕は意識を失った。

「―――こっち、向け。」

顎を押さえつけられて、視線を戻される。

同時に、彼が僕を攻め立てる。

「・・・っう！！」

思わず、噛み締めていた唇から息が零れてしまった。

そうしたら、噛み付くようにキスされた。

何の躊躇もない激しい動きに、新しい涙が零れ落ちる。

「・・・っ！」

口付けから逃れる為に、思いっきり歯を立てた。

「―――上等だ・・・。」

「・・・ぁうっ！！」

ゾクリと背筋が震えるような壮絶な笑みが、口元を拭った彼の顔に浮かぶ。

扇情的な色に濡れるきつい目線が細まると同時に、僕を陵辱していた灼熱の塊が中で暴れ回る。

激しく突き上げられて、身体が悲鳴を上げる。

何度も君に抱かれる事に慣れてしまった身体は、与えられる熱に熱くなってしまうけれど・・・どうしても心が伴わない。

霞む視界を無理矢理向けて、睨み付けると、それ以上に苛立ったような眼差しが返ってきた。

暴力で僕を痛め付けているのに、それ以上に傷付いた顔をするのは、どうして？

哀しい色を滲ませたその瞳に映る僕の姿は、きっとどうしようもなく惨めなんだろう。

こんな風に、彼に哀れみを掛けられる位―――僕は、弱い。

「ふ・・・ぅ・・・」

嗚咽が零れ落ちる。

君の温もりが消えていく。

嫌だ、嫌だ・・・いやだ。

今だって記憶の中にしか君は残っていないのに、こんな風に激しくて熱い現実を見せ付けないでよ！

置いていかないで・・・僕を。


君を好きだった僕の心が―――コワレテイク。

「――――――っ！！」

その瞬間。

僕をきつく抱き締めた彼が何かを言ったけれど・・・もう、何の音も拾えなかった。

ただ何処までも熱い肌の温もりだけが、薄れていく意識を包み込んでいた。