１．耳に残るは君の声

覚えてる・・・ずっと・・・。

忘れる筈もない。

―――耳に残る言葉。

いつか、この身が消えてしまっても。

奏でた音色は、消える事はない。

先人たちの残した偉大な楽曲の全てが、その為に作られたモノではなかったかもしれないが・・・。

それでも、聞く者の心に響く音色は総じて名曲と伝えられる。

魂の込められた音符は流れるように、楽譜の上で踊りだす。

軽やかに、時にはしっとりと・・・。

激しく踊る時もあるし、楽しく語る時もある。

『音楽は、時として言葉以上に深い感情を伝える術だから・・・。オレの『音色』は、オレの『詞』・・・』

口下手な彼は、そう言って微笑した。

ギターを片手に、時には激しく・・・時には穏やかに・・・。

耳に響く旋律は、確かに彼の気持ちを物語っていた。

「ありがとう・・・オレのギターを・・・好きだと言ってくれて・・・」

優しい笑顔は、初めて見た気がした。

ステージの上、誰よりも輝いていた姿は、全ての者を魅了する程の『音色』で、飛翔した。

―――それが、彼を見る最後になるなんて・・・。

『ありがとう・・・拓ちゃん・・・』

忘れない・・・ずっと。

忘れる事なんてできない。

―――耳に残る君の声。

ずっと、ずっと

・・忘れない・・・





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