（注意！！このＳＳには、１８禁表現が含まれております。天羽と拓がいちゃいちゃしているだけの話なので､飛ばしても内容的には全く問題ありません。嫌いな御方はお気を付け下さい―――Ｔ△Ｔ：）

ＭＯＯＮ　ＢＡＢＹ　（後編）　４


　家に戻ってきた拓たちは、時貞がガレージに車を入れている間、迎えに出てきたアービィとルーファスと遊んでいた。
　車の中でウトウトしていた子供たちも、大きな遊び相手に大喜びで抱きついていく。
　時貞と拓以外には、懐かない筈の二匹も、何故か時夜と拓実の好きなようにさせたまま、じっとしている。
　キャッキャッとじゃれつく子供達を、邪険にする訳でもなく・・・ひょっとすると喜んでいるのではないかというぐらいに、尻尾を揺らしていたりして・・・。
　「アービー♪」
　「ルーっ！」
　それぞれに、その長い毛なみに顔を埋めるようにして、お気に入りの方の名前を呼んでいる。
　自分よりも遙かに大きな犬の姿を見ても・・・顔中を嘗め回されても・・・二人とも大喜びなだけで、怖がる事はない。
　肝が座っているというのか・・・鈍感なだけか・・・。
　「―――お帰りなさいませ。」
　キィッとドアを開けて、檜原が声をかけてくる。
　「あっ、ただいま帰りました？！」
　驚いたように、拓は慌てて振り返りながら会釈をする。
　いつの間にか戻ってきていた時貞は、持っていた車のキーを放るように檜原に投げつけた。
　そうしてから、ルーファスにくっついていた拓実を抱き上げる。
　「・・・ダディ？」
　キョトンと見返す拓実に、時貞は微笑を浮かべる。
　「一緒に、お風呂入ろう♪・・・拓ちゃんは、一緒に入ってくれないから・・・」
　言いながら、いそいそと屋敷の中に入っていく。
　一瞬、意味が掴めなかった拓は、次の瞬間耳まで真っ赤になった。
　「―――時貞くんっ？！」
　慌てて、時貞が消えた後を追いかける。
　時夜の手を繋ぎながら・・・。
　「ちゃんとすみずみまで、キレイにしよーネ☆」
　ニッコリ笑顔で告げる時貞の魂胆が、かいま見えたような気がして・・・拓はガクゥッと肩を落とす。
　大体、風呂嫌いで、シャワーを浴びるのさえ嫌がる時貞が、自分から進んでしようというのだ。
　絶対に、何か企んでいるに違いない。
　"緋"い瞳が、嬉しそうに細められれば、それだけ拓の背筋に悪寒が走る。
　更にバンザイをしている拓実の服を、楽しそうに脱がせている時貞に、それは確信へと変わっていく。
　「ボッ・・・ボクが入れるから？！」
　内心の動揺を隠すように、言い切ると、時貞は驚いたような表情を浮かべた。
　「拓ちゃんが？」
　「うん・・・だって、時貞くん長湯駄目だし・・・ずっと運転してくれて・・・疲れてるだろうから・・・・」
　なんて陳腐な言い訳なんだ？！と思いつつも、それ以外の言葉が思いつかない。
　拓の必死の言葉に、自分の事を思いやる為の台詞があったので、時貞の機嫌が良くなったらしい。
　「・・・じゃあ、分かった。」
　名残惜しそうではあったが、確かにコクンと首を縦に振った動作に、拓は漸くホッとした。
　「ちゃんと、キレイにして貰うんだよ☆」
　子供たちの頬にキスをすると、そのまま時貞は脱衣所から出ていった。
　勿論、労いの意味も込めて、拓に口づけする事も忘れはしなかったが・・・。
　

　シャーッとお湯が出てくる。
　片手でシャワーのヘッドを持ったまま、もう片方の手に当てて温度を調節しながら、拓は漸く適温に温まったお湯を、傍らに立っていた子供たちに振りかけた。
　「あつくない？」
　問いかけるように覗き込むと、二人ともブンブンと首を横にふる。
　そんな様子に、クスクスと笑うと拓はざっと二人の身体全体にお湯をかけた。
　それから、わざわざ時貞が用意したシャンプーハットをそれぞれにつけてやった。
　シャワーでざっと髪を濡らすと、そのまま両手に取ったシャンプーを泡立てる。
　両手が泡だらけになった所で、拓は優しくゆっくりと拓実の髪を洗っていく。
　そうして、次は時夜のも・・・。
　泡がなくなるまで洗い流すと、シャンプーハットを取って・・・二人を並べてイスに座らせた。
　子供用の柔らかなタオルでミルク石鹸を泡立てると、そのまま順順に洗っていく。
　くすぐったそうに身を縮ませる二人に、拓も苦笑を浮かべる。
　自分の身体と違って、結構大変な作業だが、二人が大人しくしてくれていたので、考えていたよりかは楽にできたが・・・。
　時貞が同じ事をやっている場面を想像して・・・ちょっとだけ困った顔つきとなった。
　絶対に、拓実の方はとんでもない所までじっくりと洗って、時夜の方はおざなりにするに違いない事まで、容易に理解ってしまった。
　全身が泡だらけになってしまった所で、子供たちは珍しそうにその白い泡で遊んでいる。
　その様子が可愛かったので、拓は暫くそのままにしてやった。
　「マァム♪」
　白い泡が空の飛ぶのが面白いらしく・・・拓実はフーッと息を吹き掛けて飛ばし、時夜は両手で泡を消そうとしていた。
　「あんまり遊んでいると、のぼせちゃうかな？・・」
　言い聞かせるように告げて、拓はシャワーでそれを洗い流していく。
　水を掛けると消えてしまう白い泡を、二人は不思議そうな表情で見つめていた。
　「じゃあ、あったまってから出ようか？」
　自分が先に湯船に入ってから、一人ずつ支えるようにして入れる。
　恐る恐るお湯の中に入ってきた二人は、それでも肩まで入ると気持ち良さそうにニッコリと笑った。
　「いーち・・・にー・・さーん・・・しー・・・ごー・・ろーく・・・しーち・・・はーち・・・きゅーう・・・じゅうっ！」
　ゆっくりと数を数えると、子供たちを抱えたまま湯船から立ち上がる。
　ほんのりと頬を染めた二人が、のぼせてしまわないように。
　シャワー室から脱衣所に出てくると、そのまま一人ずつ乾いたタオルで包み込む。
　「―――時貞くんっ！」
　ドアの外できっと待っているだろう時貞に向かって、拓は声を掛けた。
　「拓ちゃん？」
　案の定、カチャッとドアを開けて時貞が顔を出した。
　「あのね・・・この子たちを拭いて、着替えさせてほしいんだ。ボク・・・その間に自分の身体とか洗って出ちゃうから・・・」
　タオルだけを巻いた二人を差し出して、そうお願いすると、拓はそのままシャワー室へと戻って行ってしまう。
　子供たちを見つめてから、その視線をシャワー室へ向けた時貞は、次の瞬間、悪戯を思いついた子供のような顔つきをした。
　「―――檜原。」
　「はい？時貞様？」
　静かに告げる時貞に、一緒に待っていた執事が問いかける。
　「頼むぞ。」
　命令はたった一言だった。
　だが、それだけで長年時貞の側仕えをしていたこの男は、全てを悟ってしまう。
　それが、プロフェッショナルだからかどうかは・・・知らないが・・・。
　「畏まりました。さぁ、行きましょう・・・拓実様。−時夜様。」
　子供たちにもきっちりと敬語を使う執事は、そのまま二人を促してこの場から立ち去る。
　檜原にとっては、命令は絶対なのだ。
　だから、拓がどんな目に遇おうとも、それが時貞の命令であれば檜原にどうこうできる問題ではない。
　だが、拓の存在によって時貞が変わったというのは間違いない。
　それを彼が喜んでいる事もまた、事実であった。
　だからこそ、せめて拓の負担が軽くなるように・・・子供たちの世話をする事ぐらいしか、できなかったのだ。
　檜原が子供たちを連れて出て行った途端に、何を考えたのか時貞は、おもむろに着ていた服を脱ぎ捨てた。
　そうして、そのままシャワー室のドアを開く。
　丁度タイミングが良かったのか悪かったのか・・・拓はドアに背を向けた恰好で頭を洗っている所だった。
　フッと妖艶な微笑を浮かべると、時貞は後ろ手でソッとドアを締める。
　そうして、気付いていない拓の背後に近づいて・・・拓が取ろうとしたシャワーを奪ってしまう。
　「えっ？」
　ハッと顔を上げた拓を、そのまま腕の中に抱きしめる。
　「―――時貞くんっ！！わっ？！」
　びっくりして、身動ろごうとする肢体を、封じ込めたまま、時貞は手にしたシャワーのお湯を当てて、拓の髪を洗っていく。
　「ご苦労様。今度は、オレが拓ちゃんを洗って上げるよ・・・」
　低い美声で、その耳許で囁くように告げる。
　ゾクリとするような口調に、拓は次の瞬間、全身を染め上げた。
　「やっ・・・？！」
　余りの恥ずかしさに、逃げようとした拓を、しっかりと捕まえて・・・時貞は片手で器用にボディソープを押し出すと、そのまま液体を拓の身体に撫でつけた。
　その冷たさに、ビクッと拓の肌が反応を返す。
　「じっ・・・自分で・・・あら・・・んぅっ・・・！」
　抗議するような唇を、口付けによって塞いでしまうと、時貞はそのまま手を使って拓の肌に擦るようにしてその原液を泡立てていく。
　滑りによってスムーズに動く指全部を使って、拓の身体の隅々まで辿らせる。
　いやいやをするようにもがく拓を、時貞は全身を使って、タイルの壁に押しつけるようにして・・・その身体を開かせていく。
　「・・・キレイだよ・・・拓ちゃん・・・」
　魔術師のような指先に、全身の力を奪われた拓が、ぐったりと壁に寄り掛かる恰好で崩れかかる。
　白い泡が、所々を覆い隠すその様が、煽情的な情景となって視界に映る。
　うっすらと目尻に浮かぶ涙が、更に無意識の仕種なだけに妙に色っぽくて・・・。
　うっとりと呟かれた言葉は、時貞の本心からくるものだった。
　シャワーをフックに掛けると、ぐったりとタイルに寄り掛かっている拓を時貞は抱き上げる。
　そうして、片手で拓を支えたまま、時貞はシャワーを浴びる位置に立った。
　拓の肢体を、白い泡が、流れ伝うのを見ながら、その後を唇で辿っていく。
　「・・・っ・・・！」
　舌が肌を這う感触に、拓は息を詰める。
　これ以上の恥辱はないくらい、拓は恥ずかしかった。
　それは、のぼせた所為ではなく緋色に染まった、身体の方が正直な程、表現していた。
　首筋から喉元に、朱色の"華"が散っていく。
　抱え込むように降りた唇が、そっと胸の花弁を摘む。
　「・・・やっ？！」
　ビクッとして、思わず拓は濡れた時貞の銀髪を掴む。
　だが、時貞の行為は止まらずに、そのまま舌で柔らかな愛撫が施される。
　「ん・・・やっ・・・」
　フルフルと首を横に振る拓は、ほんの密かな愛撫にも過敏に反応する。
　同時に伸びた指先が、下肢を割って、拓自身に絡みついた瞬間、拓の肢体は、時貞の中で何かに弾かれたように、跳ねた。
　カアァァッと紅潮した頬に、ショックの涙が零れる。
　「・・・ときさだ・・・くっ・・やめっ・・・おねが・・っ・・・」
　自由自在に蠢く手管に、拓は泣きじゃくる。
　更に、片手で拓を支えたまま、膝をついた時貞が、それを口にした瞬間、拓は激しく身じろいだ。
　「・・・おねが・・・い・・・はなし・・・て・・・んっ・・・あぁ・・・」
　両手で時貞の頭を離そうとするが、逆に舌を絡められてしまい・・・全く力が入らないのだ。
　全身を貫く快感の波が、拓の意識を飲み込んでいく。
　ガクガクと膝が震えて、立っているのも辛くなってしまう。
　閉じられなくなった唇からは、ただ喘ぎともつかない吐息が絶えず零れ落ちていく・・・。
　「―――！！―――」
　衝撃は、一瞬だった。
　時貞の促すままに、拓はその"想い"を吐き出した。
　フッと意識を手放して崩れ落ちる拓を、しっかりと抱きしめて・・・時貞はニッと口端を持ち上げる。
　甘い蜜を嚥下したと時貞は、シャワーを止めて、拓を抱え上げたまま浴槽に入る。
　べったりと張りついた拓の前髪を掻き上げると、そのままその額に慈しむようにキスを送る。
　涙の残る目尻から、頬のラインを唇で辿って、そのまま唇に・・・。
　うっすらと開かれているそれは、まるで誘っているようだった。
　全てを、時貞に委ねている拓は、意識がない。
　それでも、時貞の"激情"は止まらない。
　「・・・ゴメン・・・拓ちゃん。愛してる・・・」
　本当なら、こんなものでは足りなさ過ぎる程、時貞の"想い"は激しいのだ。
　だが、その全てをぶつけてしまえば、拓を壊してしまうのではないかという不安が、時貞を包み込む。
　精神的には、時貞の"想い"など軽々という程に包み込んでしまう拓であったが・・・肉体的には、余りにも無垢で純粋過ぎた。
　生物学的上でも、そういう行為が無理を伴う事だと言う・・・。
　所詮、受け入れる筈ではない場所に、無理を通そうとするのだから・・・その苦痛は、凄まじいものだろう。
　特に、人一倍小さな拓の身体では、それが"破壊"を意味する行為以外の何でもない事すら、理解っていた。
　だが、感情がついていかないのだ。
　傷つけても・・・つなぎ止めておきたくて・・・その全てを、全身で感じていないと、狂ってしまいそうな程、拓を渇望してしまう。
　いつか・・・その全てを"食らい"尽くしてしまうのではないかと思える程に・・・。
　欲しくて、堪らなくなるのだ。
　その"存在"―――全て、が。
　「・・・拓ちゃん・・・」
　"想い"を伝えるように、何度も名を呼びながら、時貞は拓が自分を受け入れられるように、愛撫を続ける。
　背筋から辿った指先が、双丘の奥まった蕾に触れる。
　ゆっくりと、怖がらせないように・・・そこを溶いて・・・柔らかくしていく。
　お湯の中でしているせいか・・・徐々に解けていく箇所に、時貞はゆっくりと指を忍ばせた。
　途端に異物を感じた拓が、うっすらと意識を取り戻す。
　そうして、自分の態勢に気付いた瞬間に、狼狽する。
　「あっ・・・なんで・・・・」
　「拓ちゃん・・・」
　泣きそうな表情で、問いかける拓に、時貞はただ微笑を浮かべただけだった。
　増やした指を、拓の中で蠢かせると、途端に拓は時貞にしがみついた。
　「―――あぁっ・・・」
　「・・・可愛いね・・・拓ちゃん。」
　フッと麗笑を浮かべると、そのまま指を引き抜いて、すっかり堅くなった自身を、突き刺した。
　「ひぃぁっ！」　　
　衝撃と痛みに、拓の指先が救いを求めて、しがみついた時貞の肌に爪を立てる。
　水の中という事もあって、いつもならきつく拒むような拓の狭い箇所も、抵抗もなく時貞を飲み込んでいく。
　おまけに、浮力によって旨く動かない四肢の所為で、時貞の思いのままにされている状態に、拓はただ涙を零す事しかできなかった。
　「・・・っぁ・・いたっ・・・あっ・・・」
　深く深く刔られるような感覚に、嗚咽が漏れる。
　悲鳴のようなそれが、耳に届いても時貞の動きは止まらない。
　それは、怖い程の"情愛"。
　飢えが満たされるまで・・・渇きが収まるまで・・・ただ貪り尽くす・・・野獣の如く。
　この場合、拓は"龍神に"捧げられた贄でしかないのだろうか？
　思うさま揺さぶられて・・・何度も突き上げられて・・・激情の渦に全身を巻き込まれながらも、拓は涙に濡れた瞳で時貞を見た。
　欲望を感じない拓に取っては、それは苦痛の行為でしかないのだが・・・それでも、時貞を否定する事はしない。
　同情なのかもしれないし・・・憐れみかもしれない。
　それでも、この行為が、告げられる言葉以上に、時貞にとって拓の"存在"がなくてはならないものなのだと、全身で告げられているようで・・・。
　どうしても、突き放す事ができないのだ。
　こんな風に、拓を傷つけながらも・・・それ以上に傷ついた眼差しをしている時貞を知っているから・・・。
　「・・・くんっ・・・」
　両腕を回して、拓は時貞を包み込む。
　「・・・ときさだ・・・くんっ・・・」
　掠れる"声音"で、拓はただ時貞の名を呼ぶ。
　涙に、濡れた拓の"瞳"が真っ直ぐに、時貞を見つめた時・・・時貞の瞳が"真紅"に変化した。
　心情の全てをぶつけるような、激しくて深い口づけ。
　同時に、一層深く突き上げた時貞に、拓は背筋を反り返らせた。
　全身が硬直した次の瞬間、弛緩した身体は、そのまま時貞の胸に倒れ込む。
　「・・・拓ちゃん・・・」
　肩で荒く息をしたまま、時貞は深く息を吸い込んで・・・"想い"を吐き出すように・・・満足したように唇を綻ばせた。
　両手で拓の身体をしっかりと抱きしめたままで・・・。

　その夜、浴槽の中で散々な目にあった拓が、すっかりのぼせて熱を出し・・・その苦しそうな様子に、泣きじゃくる子供たちを寝かしつけるまで、時貞が四苦八苦したのは、自業自得というべきであろうか？
　それでも、ちゃっかりと同じベットで眠ってしまう辺りは、全く懲りていないようであった―――。

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