どうにか、皆で二年生に進級したある日の事―――。
「拓ちゃん！横浜ライブいかない？」
突然の真里のお誘いに、拓は目を丸くした。
「ライブ？」
「うん！夏生さんからチケット２枚貰ったんだ。だから、行こうよ☆」
にっこり笑顔で言う真里の後ろでは、秋生が溜め息を零している。
それだけで、本当は秋生が貰ったのだと、理解る。
「・・・いいの？」
だから、目の前でニコニコしている真里にではなく、秋生に聞いてしまう。
「―――勿論良いに決まっているよねぇ、アッちゃん・・・」
「・・・お・・・おぅ。」
クルリと拓から自分に顔を向けた真里を見た秋生は、慌てて大きく頷いた。
真里の凄みは本気の証。
ここで下手な事を言うと、その怒りに触れるのが理解ったからだ。
「・・・じゃ・・・じゃあ、行こうかな？」
秋生の態度で、気付いた拓も慌てて答える。
「わーい、拓ちゃんとデートだぁ♪」
訳の判らない事を言いながら、教室内をスキップする真里に気付かれないように、拓は秋生に向かって両手を合わせて謝罪した。
そんな拓に、秋生も苦笑を浮かべて応じていた。
それぞれのクラス毎に、チームが分かれている“乱校”では、クラス替えも無く・・・余程の事が無ければ留年する事も無い。
だから、単位が足りなかったり・・・出席日数が足りない生徒は、参加するだけでＯＫな補習や、簡単なレポート一枚で卒業もできるのだ。
尤も、その後の進路は自分の力で切り開かねばならないのだが・・・。
「ところでマー坊くん。そのライブって誰が出てるの？」
まだ跳ね回っていた真里に向かって、拓は気を取り直して質問した。
「―――えっと、誰だっけ？」
立ち止まった真里が、首を傾げたので、拓は更に肩を落とした。
誘ってくれるのは嬉しいが、チケットの内容ぐらいは把握していて欲しいと思うのは、贅沢ではないと思うから。
「・・・チケットに書いてあるんじゃないか？」
横から秋生が助け舟を出す。
「あ、そっか！」
にっこりと笑って頷く真里は、高校二年生だとはとても思えない。
尤も童顔に関しては、拓がどうこう言える立場ではないが・・・。
「―――えっと・・・・・・」
ポケットからチケットを取り出して見た真里の表情が変わる。
眉を寄せて考え込むような顔をした真里に、拓はそっと近付いて一緒にそれを覗き込んだ。
途端に目に映る横文字の嵐。
単語の羅列に、読めなかった拓も冷や汗を流した。
「―――外国のアーティストばっかりだね・・・。」
ポツリと拓が呟くと、真里もこくこくと頷いた。
「どうする？」
少し不安そうに尋ねてくる真里は、拓が行かないのではないかと危惧してだ。
実際、岡村孝子など、日本のニューミュージック系の音楽しか聴かない拓では、洋楽は全く理解らないと言っても過言ではない。
唯一音楽的に、“音色”として聴いた事があるのは“彼”の演奏だけ。
誰も覚えていない・・・だが、拓だけは心に刻み付けた“音色”。
一瞬躊躇した拓は、それでも困ったように微笑する。
「・・・行ってみようかな・・・。」
小さく笑ってそう答える。
苦手ではあるが・・・。
“彼”の『音色』以上の音が聴けなくても・・・。
せっかく、真里が自分を誘ってくれた事が、何よりも嬉しかったから―――。
「うん！じゃあ、今度の金曜日に横浜スタジアムの前で待ち合わせしよっ！！」
途端にパアッと明るくなった真里に、つられるように拓も笑った。
そうして、拓の手の中に渡された一枚のチケット。
それが、数奇な運命を引き寄せる招待状になるとは、この時の拓には思いも寄らない事だった――――。
 
 
     ＊ ＊＊＊＊＊＊＊ 
 
―――――横浜スタジアム前。
ザワザワと騒がしい群衆の中で、真里との約束を守る為に、拓は佇んでいた。
「あっれぇ？拓じゃん？！」
いきなり声を掛けられて驚いて振り向くと、そこには良が立っていた。
「リョーくん？」
「ナンだよ、オメーも見に来たんかよ？！」
「・・・う・・・うん。」
そう言えば、真里がこのチケットを持ってきた時に、いつものメンバーがいなかった事を拓は改めて思い出した。
「リョーちゃーーん、待ってよー―――――。」
そうして、良の後ろから現れた平蔵の姿に更に目を丸くする。
「リョーくん？」
「―――か・・・勘違いするなよっ！アイツにチケット貰ったから、一緒に来ただけだかんな！！京子には言うんじゃねーゾ、拓！」
問い掛けに、慌ててしどろもどろ答える良の態度に、どういう反応をすれば良いのか理解らなくて・・・拓はただ頷いて見せた。
途端に、ホッとした良だったが、次の瞬間に硬直していた。
「―――拓ちゃん、見っけ！！」
理由は簡単。
拓の後ろから、抱きつく勢いで真里が現れたのだ。
「マー坊くん？」
「ごめーん、待ったぁ？オレ急いできたんだけど・・・結局服が決まんなくて・・・」
振り返って、真里を見た拓も目を丸くする。
高校生らしく学生服で来たと言うのなら、まだ許容範囲だと思うが・・・。
「リョーちゃんも来てたんだぁ・・・」
こっそり他人の振りをしてその場から逃げ出そうとしていた良だったが、真里の言葉に足が止まる。
流石にチームの頭に挨拶ナシでは不味いかもしれない・・・。
だが―――――。
「マー坊・・・マジでその格好で入るつもりｊｙ・・・」
「オレの正装って言ったらやっぱこれじゃん？！」
恐る恐る問い掛けた良に、真里は聞きたくなかった決定打を告げた。
普通の人が聞いたら、『おいおいそれの何処が正装なんだぁ？』と眉を寄せられそうな非常識も、真里に掛かっては意味が無い。
それでも、特攻服にムラサキのハチマキと言うのは、流石に入場口を通過できるかどうかもあやしいかもしれない。
出来る事なら、拓も他人の振りをしたくなってしまうかもしれない・・・。
「そっか・・・そーだよなぁ・・・オレもそうすりゃ良かったかも・・・」
だが、そんな拓の考えとは裏腹に、良は心底感動したかのようにぶつぶつ呟いている。
同じチームと言う事で、メンバーは皆似たような性格をしているのだろうか。
余り深く考えたくないが・・・。
「リョーちゃん・・・始まっちゃうよぃ・・・？」
話題を変えようとした平蔵が、横から良の腕の裾を引っ張る。
「あぁーーー、拓ちゃんっ！オレ等も行こうっ！！」
「え？・・・あ・・・うん・・・・・・！！」
何時の間にか、周りの混雑は無くなっており、皆会場の中に入ったらしい。
時計を見れば、開演まで残り僅かで・・・拓達は慌てて入り口に向かって走り出した。
 
 
入場口で、少し嫌な顔をされたが、飄々とした真里の態度と、良の勢いと・・・夏生から貰ったというチケットの威力で、何とか席に着いたのは開演５分前だった。
席はステージの丁度真正面で、関係者でなければ手に入らないような場所だった。
しかも、偶然とは凄い事で、良たちの隣だったのである。
「・・・リョーちゃんも夏生さんに貰ったんじゃないよネェ・・・」
拓と二人っきりになりたかった真里が、にっこり笑って問い掛ける。
「あぁ？！ンな事ねぇって！！ヘイゾーに誘われたんだよ！」
「だって・・・リョーちゃん・・・行きてぇってぼやいてたじゃんか。だからオレ、マスターに頼んで貰ってきたんだ。」
「おう！スッゲー楽しみ！！」
そんな事を話している内に、開演時間になってしまった。
始まりの合図であるブザーが、スタジアムの中に響き渡る。
照明が全て消され、ステージにスポットライトが照らされた。
ステージの上では、マイクを持った司会者が、本日の演奏者たちを紹介していく。
本日の公演は、海外のアーティストをゲストに迎えた、日本のロックバンドの共同ライブであり・・・客席は全て埋め尽くされて異様な盛り上がりを見せていた。
 
 
    ＊ ＊＊＊＊＊＊＊ 
 
何組かの演奏が終わった後、突如としてステージを照らしていたライトが消えてしまった。
盛り上がっていた観客が、休憩時間かと思って席を立とうとした時・・・ステージの上からその“音色”が鳴り響いた。
静かで、繊細で・・・それでいて力強く聴いている者を引きずり込むギターの旋律。
その“音色”を、拓は確かに知っていた。
それは二度と聞く事はないだろうと思っていた“彼”のものであり・・・。
ドクンと鼓動が鳴った。
ステージの上、一筋のブルーライトに照らし出されたシルエット。
『―――――！！―――――』
声にならない程の驚きが、拓を支配した。
決して消えることの無い“残像！。
忘れる事の出来ない、その“姿”。
ステージでソロギターを演奏していたその者は―――。
「・・・とき・・・さだ・・・く・・・ん・・・・・」
震える言葉が、漸く音になった。
声に出して初めて、これが夢ではない事を確信した。
客席も、その“音色”に支配されたように静まり返っている。
ロックが主体のライブでは、珍しい光景だったかもしれない。
どれくらいの時が過ぎたのか・・・。
それは時間にしても、５分と無かっただろう。
それでも、拓にとっては永遠とも言える長さだった。
ギターのソロパートが終わり、ステージ全体にライトが当たると同時に、バンドの演奏となる。
メンバーは全部で５人。
女性ボーカルが歌う歌詞が、英語なのとメンバーの容姿から、どうやら海外のバンドのようだった。
明るいライトに照らされて、更によく見えたその姿は紛れも無く“彼”その者だった。
銀の髪に、褐色の肌。
下を向いて演奏している為に、その瞳が“緋”色かどうかは理解らなかったが・・・。
不意に、視界が霞む。
そのバンドの演奏が終わっても、霞んだ視界は元に戻らない。
「今のギターのヤツ凄かったねーーー・・・拓ちゃん？！」
物凄い喝采の中、振り返った真里が拓を見て顔色を変える
「どうしたの？何処か痛いの？」
オロオロと聞いてくる真里に、拓は一瞬不思議そうな顔をしてから、やっと自分が泣いていた事に気付いた。
「あ・・・」
無意識の内に泣いていた事に、拓は慌てて涙を拭った。
「―――こ・・・これは、ちょっと感動しちゃって・・・・・」
不安そうに見つめる真里にそう告げると、漸く真里も納得したように頷いた。
「今のヤツ、スッゲェーーー！！オレもあんなン“演奏”ってみてーーー！！」
握り拳を作って言う良も、大分興奮していた。
実際、観客の興奮が冷めないので、一時休憩を取った程だった。
そうして、その後もステージは続いて・・・・・凄まじい盛り上がりの中で幕を閉じたのだった。
 
 
「―――あー、楽しかったぁ！！」
会場を出た帰り道。
散々ノリまくっていた真里が、背伸びをしながらそう叫んだ。
良は早速ギターが弾きたくなってしまい、平蔵と一緒にライブハウスに行ってしまっている。
「うん！面白かったね。」
真里の横を歩きながら、拓も頷いた。
そうして、駐車場に置いておいたそれぞれの単車に跨った。
「明日、夏生さんトコに行くけど、拓ちゃんも行く？」
「・・・うん！今日のチケットのお礼も言わなきゃ。―――マー坊くんも、誘ってくれてありがとう。」
「へへ・・・拓ちゃんが気に入ってくれて良かったぁ♪」
拓が感謝の言葉を告げると、真里は照れたように笑った。
やがて、分かれ道になった。
「じゃあね、拓ちゃん！」
「お休み、マー坊くん・・・」
互いに挨拶を交わしてから、それぞれの帰路に付く。
単車を走らせながら、拓は記憶を辿っていた。
半年前の様々なこと・・・。
“彼”と出会って、ケンカして理解りあって・・・本当の友達になる前に、別れなければならなくなった事などが、走馬灯のように浮かんでは消えていく。
たとえ、全ての人が忘れたとしても・・・拓は忘れない。
忘れる事は無い。
瞬くように・・・羽ばたくように・・・逝ってしまったその『存在』を。
「―――時貞くん・・・・・・」
街並みを疾駆しながら、拓は色々な事を考えていた。
そうして、今夜の事も・・・。
ステージの上で演奏していたのは、時貞なのだろう。
だが、拓の知る時貞ではない。
それが、拓の望みが叶ったという証でもあるのだから。
 
 
     ＊ ＊＊＊＊＊＊＊ 
 
ふと気付くと、拓は初めて時貞と出会った場所に来ていた。
今思い出しても、印象的な『記憶』。
・・・と、同時にバイクの音がして、拓は弾かれたように、振り返った。
だが、それは普通の単車のエンジンの音で、彼の愛した“悪魔の槌鉄”とは掛け離れたものだった。
一瞬走った期待からきた緊張を、頭を振って消し去ると、拓はぐるりと辺りを見回した。
沿道にある桜の枝から、はらりと花弁が零れ落ちていた。
“彼”と出会ったのは、半年も前の冬の事であり、季節はあっと言う間に過ぎ去ってしまったのだ。
それでも、夜空にはあの日と同じ月が変わらずに輝いている―――。
なんとなく寂しくなってしまい、拓はベイブリッジに向かおうと考えた。
拓だけが知っている“彼”の最期の場所。
そこで、今日の『奇跡』を話せば、自分の心は慰められるだろうと思って・・・。
跨っていた単車をＵターンさせて、発車しようとした拓は、次の瞬間、息を飲み込んだ。
―――拓の時だけが、凍りついたように止まる。
鼓動すら止まってしまったかのような衝撃に、拓は愕然とした。
　
　
何時の間にか、桜の下に人が立っていた。
月明かりに浮かんだ、忘れようにも忘れられないその“容姿”。
銀の髪に、褐色の肌・・・けだる気な風貌を備えた―――龍の化身。
合わさった視線の先の瞳は、間違う事無く“緋”の色彩で。
　
　
「・・・・ぁ・・・」
その名を呼ぼうとして、拓はハッと思い出す。
目の前の人物は、もう拓が知っている時貞では無い事に。
弛みそうな涙腺を、唇を噛み締める事で何とか堪えて、拓は凍りついたように硬直している身体を動かそうとした。
「―――今夜はまた・・・格別の月夜だね。」
流暢な日本語が聞こえて、拓はビクッとした。
その声音も、独特なイントネーションも少しも変わっていない。
恐る恐る顔を上げると、艶然と微笑んだ“彼”がゆっくりと拓に近付いてきた。
「こんな夜なら、奇跡が起きても少しも不思議じゃない・・・」
語る口調が、明らかに拓に対してだと気付いて、拓は逃げ場を失った。
もしも、自分の願いが神様にきき届けられたのならば、目の前の人物は拓を識る筈がないのだ。
だからこそ、こうして生きているのだから・・・。
「そう思わないかい？―――拓ちゃん・・・。」
“悪魔の槌鉄”があるわけではない。
ギターを弾いている訳ではなく、アービィとルーファスを連れている訳でもない。
それでも、目の前の人物は、確かに時貞なのだと・・・拓は“魂”で感じていた。
「・・・ふ・・ぅぇ・・・」
盛り上がる涙が止められない。
ずっと堪えていた感情が、堰を切ったように溢れ出した。
再び巡り逢えた歓喜が、拓の全身を支配していた。
そんな拓を、時貞は柔らかな動作で・・・力強く抱き締めた。
「―――最初に意識が戻った時・・・俺は目の前の光景が信じられなかった・・・。」
泣きじゃくる拓を慰めるように髪を梳きながら、時貞は告白していく。
「・・・ダディがいてマアムがいて・・・日本じゃなくて・・・、長い夢を見ていたんだと、誰もが口にしたけど・・・どうしても、忘れる事が出来なくて・・・。」
“緋”の彩が揺らぐと同時に、更に腕に力が入る。
「日本に来てこの道を歩いてて・・・月が導いてくれた。あの時のように・・・。」
「・・・時貞・・・くん・・・」
「逢いたくて逢いたくて・・・夢の中でも捜し続けた・・・。幻想を捕まえられなくて、狂いそうな時もあったけど・・・」
綴られる“想”い。
「今は違う・・・これは、夢じゃない・・・」
うっとりと告げられる言葉に、拓は自分の願いが本当に聞き届けられたのだと悟った。
「―――時貞くんは、忘れてしまうと思ってた・・・。」
ポツリと、今度は拓が不安だった気持ちを告げる。
「拓ちゃん？」
「・・・だって、もしもボクの願いが叶うんなら・・・きっとそうなると思って・・・」
小さくなる言葉に、時貞はゆっくりと首を横に振った。
「―――忘れない。忘れる事なんか出来ない・・・そうだろ？オレは拓ちゃんに逢って救われた・・・。オレを救ったのは神様じゃなくて、拓ちゃんなんだ。オレがこの世界で見つけたたった一つの“唯一”なんだから・・・」
「・・・時貞くん・・・」
「そうして、拓ちゃんの“想”いが、オレを生き返らせて・・・絶望の闇から救い出してくれた・・・」
そう告げる時貞の瞳はもう、憂いに満ちてはいなかった。
「―――サンクス、拓ちゃん・・・。拓ちゃんと出逢えた事が、オレに取っては一番の奇跡だったよ・・・。あの頃も・・・そして、今夜も―――」
浮かんだ微笑の余りの綺麗さに、拓は思わず見惚れてしまった。
ぼーーっとしていた拓は、その顔が近付いてきて、唇に触れるまでキスされたとは思わなかった。
「・・・？！・・・」
ゆっくりと離れた途端に、ボッと沸騰したかのように紅くなる。
「・・・I　need　you.I love you taku. ・・・OK？」
日本語よりももっと流暢な英語で、時貞は愛の言葉を口にした。
「え？あ？・・・うん。」
反射的に頷いてしまってから、内容を認識し直した拓がハッと気付いた時には、二度目のキスが奪われていた。
　
　
巧みなキスに思考回路を奪われそうになりながら、それでも拓は抵抗をしなかった。
それは、時貞の行為を赦した訳では決してないのだが・・・。
だが、時貞の深い“想”いは、確かに受け止められたのだから―――。
　
　
『ボ・・・ボクの願い・・・それは・・・時貞くんが話してくれた・・・あの子供の頃の・・・両親を失った原因になったという暴動を無かった事にして欲しい・・・。そうすれば・・・きっと時貞くんは幸せになれる筈だから・・・』
　
　
それが、拓の願いだった。
願いが叶えば、時貞が日本に来て、拓と出逢う事も無くなる・・・。
それでも―――。
―――哀しい“緋”の瞳を持った“龍神”に、救いを与えたかったのだ。
　
　
力がある訳でもない。
魔法が使える訳でもない。
でも、想いが強ければ『奇跡』は本当に起こせるのだ。
　

　
夜風に吹かれた桜の花弁が、二人の上に落ちてくる。
きつく抱き締められた時貞の肩越しに、夜空の麗月を見ながら・・・拓は本当に嬉しそうに微笑った―――。
　
　
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