安らぎの風景
　
　
　―――何処までも真っ直ぐな道を、ただゆっくりと歩いていこう。
　隣を歩く君と手を繋ぎながら・・・。
　柔らかな光りに包まれたまま・・・繋がれた手から流れ込んでくる優しい温もりを感じたままで。
　ずっとこのままで・・・永遠の幸福に浸っていよう。
　
　
　見果てぬ夢があった。
　いつも楽園を探して、彷徨っていた。
　暗い夜の闇の中を・・・疾風のように・・・当てもなく―――ただ、“孤独”。
　あの夜も、そんな時の流れの中を走っていただけだった。
　『悪魔の槌鉾』とと畏怖される愛車と共に、楽しいドライブを満喫していたのだ。
　ふと、目の前にあった存在。
　声を掛けてしまったのは、単なる偶然。
　ただの気まぐれなだけで・・・。
　―――それがこんなにも、深い運命となってしまうなどと・・・一体、誰が想像できただろう？
　
　
　長い永い迷宮をやっと抜け出した迷い児のように、安心して泣いてしまいたくなった。
　不思議な感情が、身体の奥から湧き上がってくる。
　遙か昔に失くした筈の、『清らか』な『想い』。
　最初は、ただの＜気まぐれ＞で・・・二度目は＜偶然＞。
　三度目の再会は、自分の＜意志＞で捜していた・・・その姿を。
　他人に対して、興味を持ったのは初めてだった。
　いつの時も、それらは現実の『物』や『者』ではなく抽象的な『感覚』や『言葉』や『音色』だった。
　それらを認めて、自分の『魂』を信じてくれた。
　それだけで、様々な意識が浮かんでいく。
　『憤怒』や『忘却』などに、蝕まれていた『想い』が、側に居るだけで、新しい記憶を与えてくれる。
　喜びや優しさや・・・そして、人を慈しみ『愛する心』さえも。
　困ったような瞳も、その中の輝きは失われる事なく、自分の姿を映し出してくれる。
　その瞳の中ならば、本当の自分を表現する事も可能だから・・・。
　その度に、新しい自分を発見していた。
　それが、更に新鮮な驚きで『魂』を歓喜に包み込む。　反発するのではなく、受け入れてくれる・・・統べての『感情』を。
　それは、今この場に『存在』する事でさえ・・・自分の−安らぎ−となるのだ。
　
　
　柔らかな日差しが窓から入り込んでくる。
　その光りの中に、安心したように眠りに就いている、その姿がある。
　ただ、それだけの事なのに・・・とても素晴らしい事のような気がする。
　『ブロウ』達が、初めて自分の意志で、護っている。
　こんな落ち着いた時間が持てる事など、今までなかった。
　いつも何かを探して・・・絶望の淵に追いやられて・・・それに反発して生きてきた。
　その、永久に続くかと思われた時間を断ち切ってくれた−−相手。
　―――惹かれずにはいられない。
　手に入れられるなら、何でもする。
　どんな事も厭わない。
　会わなければ、もっと狂気に捕らわれた生き方を続けていた筈だから。
　小さな笑顔が見られるのなら、全てを失っても構わない。
　優しい温もりを・・・ずっと感じていられるのなら。
　―――天使が眠っている。
　自分にとっての・・・『救いの天使』が・・・。
　小さな『肉体』に包まれている、大らかな『精神』。
　偽らない・・・真っ直ぐな『清らかな魂』で純粋な愛を与えてくれる。
　あの幼い日に失くしてしまった・・・『場所』を、やっと取り戻せた。
　君という『存在』によって・・・。
　
　
　　〜眠りについている君が・・・　　_{ぱらだいす}
　　　　　　　　　　　　　　俺の最後の『楽園』。〜




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