（このＳＳは9777ＨＩＴのポールマッカー戸根井さまに捧げます。お約束の屋根裏ＳＳ（Ｔ▽Ｔ）しかも、拓ちゃんお初？！天羽がヨゴレ切っているのは今に始まった事では無いので置いておくとしても・・・（それはそれで間違ってるかも！？）精神的には多分―――天羽も初体験ですね（意味不明ＴＴ）。所詮、ＨシーンだけのＳＳって言うとこから間違ってました（反省）ごめんなさ---い！！）

恋慕
 
 
『―――愛してる・・・。』
―――それは、赦しを請う言葉。
 
 
実際、それで全てが許される訳ではないけれど・・・言葉の持つ意味が、緊張を解すのも確かだ。
人は、愛し愛される事に生きる意味を見つけられる生き物でもあるのだから・・・。
 
 
言葉以上に、温もりを求める浅ましい"心"。
そんな欲望という行動を、聖なる行為に変えてしまう『台詞』。
それが、間違っているという訳ではないけれど―――。
 
 
素肌の感触。
触れる指先の先で、肌がざわめく。
敏感な柔肌は、思った以上に柔らかなモノだった。
 
 
「・・・っ・・・」
必死に口元を押えている手の隙間から、堪え切れないように息が漏れる。
辛いだろうに・・・息苦しいだろうに・・・。
何時まで経っても、恥ずかしがる『想い人』に、時貞は薄く微笑った。
 
 
「―――声・・・聞かせて・・・」
そっと、耳を甘噛みしながら、願う。
全身をピンク色に染めながら、フルフルと首を横に振る拓の目尻にうっすらと浮かぶ涙。
それを、唇で拭いながら、時貞は優しく諭す。
何度も何度も、拓の緊張を解きほぐす為に。
 
 
「オレ・・・拓ちゃんの"音色"が聞きたいよ・・・」
そう言って、今にも噛み切ってしまいそうな指先を、口元から外させる。
途端に不安そうな拓に、代わりに与えるのは深い口付け。
 
 
「・・・ん・・・ふっ・・・んん・・・」
同時に愛撫を再開する。
必死にしがみ付いてくる拓を壊したくなくて・・・。
自分の汚い欲望を、受け入れてくれる拓を恐がらせたくなくて。
ゆっくりと時間をかけて、拓の身体を自分の熱に溶かしていく。
 
 
「・・・あ・・・や・・・・」
唇を放すと、イヤイヤをするように縋り付いて来る細い腕。
そんな仕草を愛しく思いながら、時貞は羞恥に染まった肌にキスの雨を降らす。
感じやすい場所に辿り着くたびに、そこに緋色の所有印を残して行く。
小さな花びらが、至る所に散らばる。
徐々に、荒くなっていく息使いと、零れる吐息は甘く。
力の抜けたピンク色の唇から溢れ出す"音色"は、時貞の鼓膜に心地よく響いた。
 
 
勿論、時貞は初体験ではない。
それこそ、経験だけならこの年にして既に数え切れないほどだ。
ただ欲望を吐き出すだけのＳＥＸ。
そこには、何の感情も無い。
あるのは獣のように屠る浅ましい肉体だけで。
そんな関係ばかりだった。
興味本位で近付いてくる女や、時貞の外見に惑わされる者ばかり。
所詮、本当の自分を・・・真実を"視"てくれる者などいない―――と。
だから、諦めにも似た暗い劣情を抱えていた。
 
 
それなのに、変わった心。
変えられた―――意識。
まるで幼稚な片思いのように、動作がギクシャクしてしまう。
壊したくなくて、汚したくなくて。
―――それでも、欲しくて堪らない。
そんな、馬鹿げた・・・感情が全身を支配した―――唯一の相手。
それが、拓だった。
 
 
こんなにも・・・。
こんなにも、触れているだけで満たされる。
―――自分の腕の中にいるだけで。
仕草が時貞の瞳を捕らえる。
声が、耳を擽る。
存在が―――心を虜にする。
離せなくて・・・放したくなくて・・・。
気付けば、全てを欲していた。
その心も―――身体さえも。
 
 
「・・・アイシテル・・・」
それは焦がれる者の、請う言葉。
赦しを・・・救いを求める―――"想"い。
口にする事なんて、決して無いだろうと思っていたのに。
響きは、思った以上に心地よい"音色"で胸を捕らえた。
 
 
「―――ボク・・・も・・・・・」
繋がった痛みと熱に、涙の雫を溢しながら・・・拓は綺麗な瞳で微笑った。
 
 
途端に、泣きたくなる。
劣情が、身の内を駆け巡ろうとも・・・。
満たされた心が、それ以上の感覚を与えてくれたから。
愛しくて・・・大切で・・・。
遠い昔に失ってしまった心の欠片を埋めてくれる『存在』。
だから。
 
 
―――だから。
 
 
側にいる事を許されるように。
共に"在"る事を赦されるように・・・。
想いを紡いでいこう。
 
 
『言葉』を・・・"音色"にしながら―――。
 
 
ＥＮＤ。     ／　　　　戻る