目を閉じれば、その姿が浮かび上がる。

それは、夜の街中だったり、月明かりの下だったり・・・様々な場所。

君は何時も怒ったように、神経を張り詰めていた。

君の機嫌が良かったのは、一緒に話した宮沢賢治の世界の事や、音楽を紡ぎだしていた時と温もりを分け合った時だけ。

僕が知っている君は、きっと君の生きてきた中では本当に短い時間だったと思う。

それは、僕にとっても同じ。

出会ってから、本当にあっという間に、君は僕の前から居なくなってしまった。

それなのに、共有した時間と記憶は、今までの僕の全てを変えてしまった。

もう、昔には戻れない。

君を知らなかった時間には帰れない。

怒っている顔。

哀しんでいる顔。

寂しそうな顔。

そのどれとも違う、何かを考え込んでいる静かな横顔。

そして、最期に僕に向けてくれた・・・心からの、『笑顔』。

何時でも目を閉じれば鮮やかに蘇る。

君の姿や声音。

僕を抱き寄せた腕の温もりは、もう消えてしまったけれど・・・。

面影は、記憶の中で何よりも色鮮やかに、映る。

―――その分、目を開けた世界の色が褪せていく。