(このＳＳはキリリク28000hitの白夜様に捧げます。リクエストの『温泉旅行露天風呂でラブラブ(笑)のザキ×拓（屋根裏行）』ですが・・・ちゃんとクリアーできたでしょうか？ドリーマーが思うところのザキ拓って、どうしてこう互いの想いが微妙にすれ違う話が多いんでしょうね・・・ｏｒｚ傍から見れば、お互いがちゃんと相手の事を好きなのにｗｗｗ因みに、高校生二人で温泉旅行はやはり無理があるのでは？！―――と言う事で、今回はロマンチックシリーズの二人で書かせて頂きました（詳しい設定はキリリク26000をご覧下さい）甘いラブラブでは無いですが、エロいので、地下室行きです（＞ｗ＜）ｂ初めての露天風呂Hｗｗｗこんなんで如何ですか？（苦笑））

一体どうしてこんな事になってしまったのだろう？

零れ落ちるのは、甘い吐息だけ。

必死に記憶を手繰り寄せてみたけど、原因が何処にあるのか全く理解らない。

ただ理解るのは・・・。



いろは唄




「―――何、考えてる？」

「ひゃあっ？！」

後ろから声を掛けられた途端、拓の口から変な声が出た。

途端に、緋咲の眉が中央に寄っていく。

それは、機嫌が悪くなる証。

もう見慣れてしまった表情なのに、どうしても直視できない。

壊れそうな程、ドキドキとなる鼓動の速さを、抑え込むために必死だから。

「どうして、一々驚いて、変な声を出すんだ？そろそろ、甘い声を聞かせてくれ。」

「・・・っ！」

項に口付けられて、拓の息が詰まる。

全身が真っ赤になっていくのは、浸かっている温泉の所為だけでは決してなく。

同じ男に抱き締められている事に、本当だったらもっと嫌悪感が湧き上がっても不思議じゃない筈なのに。

身体の奥底から湧いてくるような感覚に、全身の感覚を持っていかれそうで―――ただ怖いだけ。

自分だけがおかしくなっていくような・・・そんな感覚。

暖かいお湯の中に浸っているのに、ゾクリと身を震わせて拓は与えられる感覚から逃れようと身を捩った。

途端に、弾けた水面に波紋が広がる。

「ちょ・・・ちょっと・・・待って・・・・んぅっ！」

心臓が破裂してしまうのではないかと思いながら、必死に首を振って僅かな抵抗を試みるが、強い力で引き寄せられて更に深く抱き込まれてしまった。

どうしても羞恥に蝕まれた気持ちが行為に付いていけない拓は、震える声で自分の気持ちを伝えようとして・・・声を奪われた。

濃厚な口付けによって・・・。

大きく見開かれた瞳の間近に、整った顔があって、心臓が更に跳ね上がる。

もう、息をするのも―――辛い。

ギュッと瞑った瞼の裏に、鮮やかに浮かび上がるのは青紫の残像。

濡れて艶めいた少し長めの髪と・・・密かに寄せられた眉に・・・もどかしそうな相貌。

思っていた以上に均整の取れた身体は、人のコンプレックスをこれでもかと刺激したけれど―――惚れ惚れするぐらい格好良い。

その腕の中に抱き込まれて、キスされている現状に・・・拓の意識はどんどん白旗を掲げ始める。

どんなに可笑しくても、間違ってても、世間に認められる関係でなくても。

『―――好きなのだから、仕方ない。』

離れてしまった時間の、身を切るような寂しさを知ってしまったら、もう認めない訳にはいかない。

彼―――浅川拓は、自分が大切な友人だと思っていた緋咲薫に完全に惚れている事を、改めて自覚した。

―――事の起こりは３日前。

「・・・温泉？」

「あぁ。ここんトコ係わってた新しいリゾート地計画の一環で、実際に泊り込む体験宿泊があって・・・何処が良い？」

ドサリとテーブルの上に山の様に置かれたのは、何冊ものパンフレット。

その時点で、自分も一緒に行くのだという事は決定していた。

相変わらず強引だが、取り合えず意見を聞く位の気持ちは持ってくれたようなので、拓は幾つかのパンフレットを手に取った。

「へぇ・・・色々あって面白そう。あ、ここなんか温泉って言うより、なんか南国のホテルみたいだし・・・」

「何処だ？」

写真で見る場所は、それぞれに趣向を凝らされているようで、色々な種類の温泉やお風呂がある。

ソファーに陣取ってパンフレットに目を通していた拓の横に、コーヒーを手にした緋咲が当たり前の様に座って手元を覗き込む。

そんな仕草一つに、拓はドキドキしてしまうのだが、それがどうしてなのか理解らない。

肩越しに覗き込んできた相手の、長めの前髪が触れそうになっているだけなのに。

こんなに動揺しているのが、自分だけなのもなんだか変な気分で。

「えっ・・・と・・・体験宿泊って・・・陣野くんも？」

「あぁ？何で、平蔵？」

慌てて意識を逸らそうと、問い掛けた途端に、返ってきたのは不機嫌な顔。

「だ・・・だって・・・仕事の関係なら・・・」

同じネット会社を経営している陣野平蔵は、緋咲の幼馴染みであり腹心だ。

仕事の話ならば、同行するのだとばかり拓は思っていた。

「あのなぁ・・・。」

ビクビクしながら困った顔をする拓に、緋咲は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

“何処の世界に、邪魔な保護者同伴で恋人と温泉旅行に出掛けるバカがいるんだ？”

喉まで出掛かった言葉を、緋咲は無理やり飲み込んだ。

ここで怖がらせたら、旅行自体が駄目になる事を察知したからだ。

彼の想い人は、もう２０歳を過ぎて成人している癖に、恐ろしい程そうゆう話題に疎いのだ。

世間一般では罷り通る殆ど常識のような事も、一々教えないと本当に無垢で。

まぁ・・・それが惹かれる原因の一つでもあるのだから、無理に変えたいとも思わないが・・・。

「―――お前と二人だけで行きたいんだけど・・・俺は。」

慎重に言葉を選んで、告げる。

途端に、言葉を理解した拓はプシューと頭から湯気を出しそうな程頬を紅潮させる。

それが、ぶりっ子でもなんでもなくて・・・実際の反応なのだと気付いて、浮かぶのは苦笑。

余りにも初心な恋人に、もっと素直な感情が溢れ出る。

「・・・駄目か？」

逃げようとする身体を、軽く押さえ込むだけで、全身を硬直させる拓の柔らかな耳たぶに唇を寄せて・・・掠めるように囁いてやる。

言葉もなく首筋まで赤く染め上げた拓は、緋咲の言葉に震えながら本当に小さく頭を振った。

目の前で綺麗に色付いた箇所が、酷く甘く見えて・・・緋咲はそのまま吸い込まれるように項に口付けた。

ピクンと反応を返す拓が、愛しい。

これだけ積極的に、身体に愛の証を刻み付けても、その心は何時までも純粋で清らかなままだ。

甘い言葉と行為で、簡単に全てを投げ出してきた・・・そんな、今までに緋咲が抱いてきた女性達とは、全く違う【存在（もの）】。

手荒く扱ったら、粉々に砕けて何も手元に残らないような・・・そんな畏怖さえ覚えさせる相手。

緋咲と同じような性格の癖に、悪友でもある天羽時貞が、どうしてあれ程大事に護っていたのかが、のめり込むほどに嫌というほど思い知らされて・・・。

それでも、渇望する感情は抑え切れなくて。

「・・・今度の土・日で予約しとくから・・・」

腕の中にすっぽりと入ってしまう拓の身体をソファーに押し倒しながら、緋咲は酷く切ない表情でそう断言した。

緋咲が選んだ場所は、落ち着いた雰囲気の老舗旅館だった。

そこの離れを貸し切ってしまったのは、流石にお金持ちのやる事は違うのだと、改めて拓に思い知らせたものだ。

緋咲はそれが当たり前の様に、案内した仲居にチップまで渡していて・・・場慣れしているその姿に、拓はつくづくと棲んでいる世界が違うのだと思った。

案内された部屋の作りは、何処も彼処も情緒溢れる重厚な造りで、思わず場違いな自分に恐縮してしまったぐらいだった。

雰囲気的には十分落ち着けるのだが、如何せん貧乏性の自分では広過ぎてどうして良いか理解らない。

それこそ、友人みんなで来ても十分ゆっくり出来そうな場所は、二人では間が持たなくて。

余りの豪華さに、身の置き所がなくて、尻込みする拓の気も知らず、さっさと部屋に入ってしまった緋咲は、色々な場所を見定めている。

その姿に、拓はこれも緋咲の仕事の一環なのだという事を漸く思い出した。

恐る恐る敷居を跨いで、部屋の中に入って拓も肩の荷物を降ろす。

窓に近付くと、縁側があり・・・小さいながらも綺麗に整えられた庭園が存在していた。

そして、その庭園を望めるように設えられた露天風呂があって、豊富な湯を溢れされていた。

「・・・あんなトコにお風呂あるんだ・・・」

思わず、拓は感想を口にしてしまった。

「あぁ。庭を見ながら入れる。・・・四季の移り変わりを見ながら、のんびりと過ごせるのが人気らしいな。冬とかは、雪が積もるから結構綺麗で、この離れは予約を取るのも難しいらしい。だが、それ以外の季節がいま一つパッとしないから、今回の開発企画に参加している。」

「へぇ・・・。十分ステキな部屋だと思うけど・・・。」

「そうか。本当は、もっと若い人にも利用して欲しいと旅館側は言っているけどな。」

「えっと・・・それは多分、金額も桁外れ・・・とか？」

ドキドキしながら、聞き返すと、緋咲は意味有りげな笑みを浮かべただけだった。

それだけで、理解ってしまう。

「ああぁ・・・ボク・・・そんなにお金持ってないのに・・・」

「―――バカか・・・。んなの、誘った俺が出すのが、当たり前だろう。それに、今回は体験も兼ねているから、タダみたいなものだし。」

「でも・・・悪いよ・・・。」

困ったように言う拓に、緋咲は一瞬思案顔となったが、不意に口端を持ち上げた。

「なら、金の変わりに、身体で払ってもらおうか。」

「・・・え？」

「―――ここにいる間のお前の全部・・・俺にくれ。」

目を細めて、微笑う緋咲に、拓は心臓が口から飛び出すかと思った。

それは、緋咲の【願い（おもい）】。

それの意味する事を悟って、羞恥に全身が染まる。

ゆっくりと近付いてきた緋咲の口付けを、拓はドキドキしながら受け止めた。

チャポン。

白濁した湯に浸かりながら、拓はのんびりと手足を伸ばした。

食後に女将に仕事の件で呼び出された緋咲が居ない内に、風呂にでも入ってしまおうと露天風呂にやってきたのだが・・・思った以上に広い浴槽はとても気持ちが良くて。

ガラス窓を隔てた先には、灯篭の灯りでライトアップされた庭園が、広がっている。

夜は少し肌寒いこの季節は、何処からともなく虫の声も聞こえてきそうだ。

温泉の湯も、両手で掬って零すと、少しとろりとしているのが理解った。

「部屋ん中にいないと思ったら、先に風呂に入ってたのか。」

「っっ！！」

突然に背後から声を掛けられて、ビクッと拓は身を竦ませた。

振り向いたら、服を脱いでいる緋咲の姿を見てしまい・・・慌てて視線を逸らす。

「・・・ぼ・・・ボク・・・もう、出るからっ！！緋咲くん・・・ゆっくり入れば？」

赤くなってしまった顔を隠すように横を向きながら、拓は早鐘のように鳴る胸を押さえて上擦った声でそう言った。

「あぁ？一緒に入ったって構わないだろ。何か、都合悪いのか？」

「え？べ・・別に、そういう訳じゃないけど・・・は・・・恥ずかしいし・・・」

「―――女じゃあるまいし・・・今更だろ。」

真っ赤になっていう拓に、緋咲は平然と答える。

確かに、緋咲みたいに均等のとれたモデルみたいな肉体の持ち主ならば、見ても目の保養だから構わないかもしれないが・・・貧弱な自分の身体が嫌だからとはとても言えなくて、拓はちょっとだけ悲しくなった。

「それより、湯加減はどうなんだ？熱かったり、冷たかったり・・・」

「え？ううん・・・湯加減は、とっても気持ち良いよ。」

「なら、お前もゆっくりすれば良いだろ。」

「―――うん。」

改めて言われて、拓もドキドキしながらも頷く。

同じ男同士なのだから、あんまり恥ずかしがるのもおかしい気がしてきたからだ。

それでも、洗い場で身体を洗い始めた緋咲の姿をつい目で追ってしまった拓は、その全身から溢れ出るような色気に当てられてしまい、クラッと眩暈を起こしかけた。

自分には決してないだろうそれは、悔しいような、羨ましいような・・・。

はぁ・・・と溜め息を付いて、無理やり視線を外して自分の身体を見る。

比べると非常に惨めな気分になってきたので、拓はブンブンと首を横に振って考えを追い払った。

腰にタオルを巻いたまま浴槽の縁に座って、拓は足でお湯をかき混ぜた。

火照ってしまった身体を冷やさないと、本当に上せてしまいそうだった。

―――口付けの所為でぼうっとなっている状態で、拓はここに至るまでの経緯を走馬灯の様に思い出していた。

白濁した湯船の中で、拓は緋咲の腕の中に後ろから抱き込まれていた。

緋咲の手が拓の身体のラインを辿る度に、反応した拓の震えによって波紋が生まれる。

項や首筋に幾つもの紅い花を咲かせながら、緋咲は拓の弱い部分を攻め立てていく。

「・・・っっ・・・ぅん・・・」

必死に唇を噛んで、拓は感覚から逃れようと抵抗するが・・・それでも、敏感な部分に直に触れられて、感じるなという方が無理だった。

「・・・っぁ・・・！」

噛み締めていた唇が解けて、思わず声が上がってしまう。

肌に吸い付いていた緋咲がフッと笑った気がして、拓はゾクリと肌を粟立たせた。

ただでさえ、お湯の中で上せそうなのに、更に的確に与えられる愛撫によって、身体の芯から熱が上がってくる。

クラクラする意識に、拓は既に朦朧とした状態だ。

鼓動の高鳴りも鼓膜を破りそうな程、大きく鳴り響いて・・・。

「・・・も・・・ダメッ！！」

体内に差し込まれた指が蠢く度に、入り込む湯の熱さに、とうとう耐え切れなくなって拓は逃れるように立ち上がった。

「―――拓っ！！」

絡みつくような、余りの熱さから逃げたくて、浴槽の縁に足を掛けて上がろうとした拓は、背後に立ち上がった緋咲に、捉まってしまった。

強く腰を掴まれて、そのまま引き寄せられる。

「・・・ぃっ・・・ああぁっっ！！」

既に十分な硬さを持った熱い塊が、体内に侵入してくる衝撃に、拓の口から抑え切れなかった悲鳴が上がる。

背後からきつく抱き締められて、いつもよりも深く密着した身体の所為で、いきなり奥深くまで犯されて、拓は前のめりに突っ伏した。

全身を震わせる程の強い刺激に、息が続かない。

湯の中で解された箇所は、いつもよりもスムースに緋咲の楔を受け入れたので、中を抉られる感覚が、痛みよりも早く湧き上がっていく。

「・・・あ・・・あ・・・あ・・・」

呼吸が荒くなり、目の焦点が合わなくなる。

チカチカと目の前が眩み、このまま自分が死んでしまうかもしれないと拓は思った。

覚えのない涙が、溢れて零れ落ちる。

拓が薄れる意識を手放そうとした途端、緋咲の強い腕が拓の身体を抱え込んで体勢を入れ替えた。

「・・・ぁうっ！」

強い刺激に、拓は飛ばしかけていた意識を引き戻される。

浴槽の縁に座った緋咲の膝上に抱えられて、自身の体重によって繋がりが更に深まる。

ゾクゾクする快感に、拓は目の前の緋咲にしがみ付いた。

もう、どうすればこの感覚から逃れられるのかも理解らなくて・・・。

「・・や・・・怖い・・・」

ガクガクと四肢を震わせながら、身体の中から湧き上がってくる感覚に苛まれて、翻弄されて・・・拓の意識が悲鳴を上げる。

自分がどうなってしまうのか理解らない、心細い状態に・・・零れ落ちるのは涙だけ。

そんな拓を慰めるように、何度も背を撫でて・・・緋咲は零れ落ちる涙を口付けで拭っていく。

濡れた肌から滴り落ちるのは、もう水なのか汗なのか理解らない程、全身が熱い。

「―――大丈夫・・・怖くなんかないから・・・もっと力を抜け・・・・」

「・・・どうしたら・・・良いのか・・・理解んない・・・」

耳元で緋咲が言い聞かせるように囁くと、泣きじゃくる拓の首がフルフルと横に振られる。

そんな仕草一つとっても、緋咲には煽られているようにしか見えなくて、熱い拓の中で大きくなってしまう。

その変化を敏感に感じ取った拓が、更に全身を硬直させて・・・ただでさえきつい内壁が更に緋咲を締め付ける。

「・・・っ・・・！！」

千切れそうな痛みを感じて、緋咲が眉を寄せる。

緊張を解かないまま、動けば拓を傷付ける事を理解っているだけに、生殺し状態は、緋咲だって辛いのだ。

それでも欲しいという欲望で、無理をさせているのは間違いなく自分の方なので、緋咲も根気よく拓を慰める。

何度もキスをして・・・感じやすい箇所に指をやって愛撫して・・・。

女だったらとっくの昔に理性も何もかもかなぐり捨てて、全身で欲しがってくるような状態なのに―――。

性感の快楽に対する拓の恐怖は、どんなに肌を合わせても消えなくて。

「・・・拓・・・拓・・・」

「・・・っっ・・・うんっ・・・ぁあっ・・・」

泣きながら緋咲を受け入れるのが、拓の精一杯なのだとしても。

辛い思いをさせたい訳ではなく・・・身体を繋げる事だけが、愛を伝える手段でもないけれど、それでもその行為が、自分だけに許された特権だと知っているから―――緋咲には止められない。

誰にでも優しくて、傷付きやすくて・・・拓が本当は、流されているだけなのかもしれないが、もう手放す事なんかできやしない。

腕の中のある【体温（ぬくもり）】がどんなに大事なモノなのかを、嫌と言うほど知っているから・・・。

「何も考えなくて良いから・・・俺の事だけ見てろ。」

与える愛撫によって、漸く身体の力を弛緩させた拓に、緋咲は言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

言葉通り素直に、涙に濡れた綺麗な瞳が真っ直ぐに向けられて、緋咲は満足したように笑った。

「・・・感じるままに、素直に乱れれば良い。」

吐息の様に告げて、緋咲はゆっくりと動き出す。

時間を掛けた分だけ、馴染んだ拓の身体は、既に抵抗力すら失っていた。

「・・・ぅぁ・・・・」

拓の瞳が閉じられて、動きに併せて背中が反り返る。

すっかり枯れてしまった喉から、それでも声が零れ落ちる。

ギリギリまで抜かれて、引き戻される動きに、内壁が擦られて・・・拓の背筋を奇妙な感覚が走り抜ける。

痺れ過ぎてしまった身体では、それが快感に拠るものだと気付く事もできなくて。

全く力の入らない腕を、精一杯緋咲の首に回して、拓は必死に全てを預ける想いで縋り付く。

自分がどうなってしまうのかが、本当に怖くて・・・変えられてしまう感覚に、自分が保てなくて。

怖くて怖くて、直ぐにでも逃げ出したいのに、抱き締める腕の暖かさに、喜びを感じる自分が存在するのも事実なのだ。

与えられる行為が、酷く甘くて・・・息苦しくて・・・何時か死んでしまうのではないかといつも思うのに―――。

その相反する気持ちが、不安定な状態で精神を苛んでいる事を、拓は知らなかった。

突き上げられて、揺さぶられて・・・涙を零しながらも、拒絶する事が出来ない。

切なくて、苦しくて・・・でも、愛しくて―――甘い【刹那（じかん）】。

緋咲が与える全てが、拓にとっては傍に緋咲がいる証だから。

『―――す・・・き・・・・』

すっかり枯れてしまって、音を出せない唇が、形作る【言葉（あい）】を、緋咲が気付くことは無い。

それが、理解っているからこそ・・・拓は素直に想いを告げられる。

本気で気付かれたら、恥ずかしくて堪らないから・・・こっそりと、息を吐くように。

『・・・す・・・き・・・だ・・・よ・・・』

体内に吐き出された熱に刺激されて、自身も解放された感覚に、飲み込まれるように薄れていく意識の中で、拓は小さく微笑った。

それは、本当に刹那の表情で・・・儚く消えてしまったけれど。

―――貴方の色に染まるのと・・・心が壊れてしまうのは、どちらが早いのだろう？