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（これも東さんに捧げたＳＳです。ペンネーム変えてた気がする（笑）一見ノーマルっぽいですが・・・実は倫子×大珠だったりして（苦笑）ドリーマー的には、須王がどれだけ倫子ちゃんに頭が上がらないかを書きたかった話です。原作で本当に鉢合わせしたら、楽しかっただろうなぁ・・・。）
双子の法則
それはそれは、穏やかな昼下がり。
一人の男がそのアパートのドアの前に立った。
南国地方の現地人のような肌の色と、金の髪。
一見しただけでは、とても日本人とは思えないような彼は、その名を那森須王と言った。
一年前に大切だった『友達』を亡くした為に、この国から離れて、違う土地で自分の力を試していたのだが、未成年な上に、不法滞在を起こして、半分程強制送還させられた強者である。
その間の荷物は、別の『友達』の元へと送りつけ・・・家に帰る事もせずに双子の妹の部屋へと転がこんで早一ヵ月。
毎日毎日、妹の機嫌を取っているのは、それだけ妹が可愛いからで・・・。
今日も今日とて、ダチの家からの帰り道に、わざわざ大通りのコージーコーナーまでバイクを飛ばしてケーキを買ってきたりしたのだ。
その容姿に相応しくない、可愛い包みを持って、今日も可愛い妹の元へと帰ってきた彼は、満面の笑みを浮かべてチャイムを鳴らした。
妹の工場の仕事が、今日は午前中で終わりだという事を知っていた為に。
だが、何度鳴らしても、妹が出てくる気配がないので、いないのかと思って仕方なく、合鍵を取り出した。
本当は、こんなドアならピン一本で開けられるのだが、最初の日にそれをやって、散々怒られてしまったので、もうしない事に決めたのであった。
「リンコちゃーん♪ただいまぁ☆」
気分はすっかり、新婚の気分である。
何しろこの男は、本当に目の中に入れてもいたくないと自慢できるぐらい妹を溺愛しちゃっていたりするのだから・・・。
昔から、その側に近づく男共は、全て葬りさってきたのだ。
勿論、それを妹に知られると後で怒られてしまうので、極秘にではあったが。
「まだ仕事から戻って来てねぇのか・・・チッ！」
声を出して言っても返答がないので、須王はあっという間に、地に戻る。
そうして、その途端に、勘が働いた。
奥の部屋に、誰かがいる気配なのだ。
「誰だっ？！」
半ばの脅しのような声を上げて、須王はどんな対処もできる姿勢を取りながらにバッと部屋のドアを大きく開いた。
そうして、信じられない『モノ』をそこで、目撃してしまった。
男が眠っていたのである。
―――それも、輪子が大事にしていて須王にも使わせてくれないクッションの上で。
余りの光景に、身構えていた事も忘れて、須王は真っ白になってしまった。
だが、それも一瞬の事で、我に返った彼は全身に怒りを漲らせた。
男は、あれだけの音がしたにも係わらずに、余程深い眠りについているのか瞼を閉じていた。
年の頃は、須王と同じぐらいだろうか？
金髪リーゼントといった、お決まりの髪形がやけに似合う顔だちは、決して不細工とは言いがたい。
―――否、かなり良い部類に入るだろう。
ここで普通の男なら、妹のＢＦだと思い、中々良い男を掴んだな・・・ぐらいは思う筈なのだが、そこはそれ。
妹に心酔仕切っている須王は、そんな事はこれっぽっちも微塵も思えない。
相手が、恰好良ければ良い程、嫉妬の嵐が吹き荒れるだけで・・・。
顔面に怒りの血管を浮き立たせて、全身から怒濤の闘気を発している須王には、"ここで会ったが百年目"ぐらいの感情しか残らなかった。
＜コンチクショー・・・何で、リンコちゃんの部屋にいやがんだよ！？しかも、オレでさえ使わせてもらえないクッションの上で幸せそうに"ネ"てやがって・・・許せネェ・・・！！＞
感情が抑えきれない彼は、その怒りのままに寝入っている男を蹴っ飛ばした。
そうして、更に須王の怒りが燃えたぎる。
彼の本気の蹴りを受けても、後ろに倒れただけで、相変わらず起きる気配が見られない相手がいる事に対して。
須王だとて、海外へと行く一年前までは、横浜の喧嘩族の『獏羅天』の特攻隊長として、喧嘩にかけては、自信があったのだ。
走り屋としての自覚を見つけてからは、なるべくおとなしくするようにしていたのだが・・・それでも、彼の蹴りに動じないのは、『横浜小僧』の前"頭"である夏生だけだと思っていたのに・・・。
ここに、その須王の蹴りを食らっても、まだ惰眠を貪れる男がいるのだ。
それが、また彼のプライドを酷く傷つける事になったのだが。
＜このまま永眠、させたるか！！＞
心の中で毒付くと、だが、どうせなら、起こして散々恐怖を与えてからの方が効果的だと思い、起こそうと胸ぐらを掴もうとして、偶然シャツがはだけてしまったのだが・・・。
途端に、須王の目がまたしても、カッと見開かれた。
はだけたシャツの中から顕れた、素肌に散らばる鬱血の跡・・・。
それは、・・・もしかしなくてものキスマークというもので。
ダメージ＝２００％
そりゃ、もう必殺の一撃なんかメじゃない程の衝撃が、須王の全身を打ちのめし、メダパニ（混乱）状態に陥ってしまった。
＜まっまっまっ・・・？！まさか、リンコとぉーーー（ＴＴ；）＞
全く持って、冗談ではない。
人が、たった一年間目を離していた隙に、可愛くて可愛くて仕方ない・・・誰よりも純粋で清らかでいてほしい妹が、こんな奴と？！―――そんな事は、決して、全く、無かった事にしてしまいたいし・・・現実にあってほしくない！！
喩え、妹が、こいつの事を好きで、だからその証をつけたとしても・・・。
お兄さんは、許しはしないのだ！！
妹の愛の証を刻んでいる、その場所を切り刻んでやりたい程・・・。
だが、それだけでは生ぬるいだろう。
どうせなら、二度と妹に会えないような身体にしてやった方が、効果も絶大かもしれない。
＜テメェがリンコを犯したなら、オレがお前を犯してやるーー＞
はっきり言って、須王はメダパニしているのだ。
だから、感情のままに浮かんだ思考に、後々の事まで考えている余裕は、全くない。
それを、本当にリンコが付けたのかという保証も何処にもないのだが・・・。
双子というのもあって、自然とそういう事は理解ってしまうのだった。
その為、自分の墓穴も掘っている事に気付かなかった。
男を掴んだまま、その鬱血の跡を更に自分のキスマークで消しながら・・・その服を脱がそうと手を掛けた時だった。
「―――それ以上、大珠に触れたら、コロス、よ。スオウ・・・」
背後から聞こえた声に、硬直する。
その呪文のような言葉に、メダパニが解けたのは良いが、別の状態に陥ってしまったようである。
「リッ、リッ、リンコちゃん？！おかえり・・・（T▽T）」
この状態で振り返る勇気は、今の須王にはない。
一体、いつの間にという状態で、須王の背後にリンコが立っていた。
恐らくは、仁王立ちの姿勢で・・・。
こういう場合、どんな言い訳も、通じる訳はないのだ。
――同じ感覚を持っている為に。
何とかして、威厳を保とうとするが、どんな世の中も、お兄ちゃんは妹に弱い立場である。
今までも散々リンコに迷惑を掛けている須王に、言い訳の余地がなかった事も、事実ではあるが。
「・・・あっちの部屋で、じっくりお話しようネ。」
金縛り状態の須王に対して、双子の妹は、実に明るい凄味を浮かべてゆっくりと宣い・・・。
―――そうして彼は、やはり双子の血は侮れないと思う程の地獄を見る羽目になってしまうのであった。
−合掌− ／ 戻る |